2008'03.06 (Thu) 23:59
特にクラシックの分野に限定して言及するならば、このホールの売りは新国立劇場と同様の四面舞台機構を備えた大ホールを初めとする施設の面だけでなく、若杉弘(初代)・沼尻竜典芸術監督以下財団法人びわ湖ホールがプロデュースする企画の数々にある。
初代の芸術監督・若杉弘は、ホールに専属の声楽アンサンブルを編成し、そのメンバーらが時にソリストとして室内オペラを演奏したり、ホールがプロデュースするオペラやコンサートの合唱を担当する。また、ホールだけではなく、県下学校への巡演(教育プログラム)、更には全国各地で演奏するまでになり、ついには3月、初の東京公演をするまでになった。
既述のオペラは、日本人キャストでヴェルディの上演回数の少ないオペラ(例:ジョヴァンナ・ダルコ、スティッフィリオ、アッティラ他)を芸術監督自らが指揮をとり行ってきた。勿論、日本初演も含まれており、その意義は高く、このオペラを見に今まで県内外から沢山の人々が訪れたのは言うまでも無い。芸術監督が代わっても、ドイツオペラを中心としてプロデュース、今年の神奈川県民ホールとの共同制作による《ばらの騎士》の成功は特筆されるべきことであろう。
そんなホールが今、岐路に立たされている。
32年ぶり、滋賀県予算に修正案 「福祉が不十分」自民会派提出へ
3月1日10時29分配信 京都新聞
滋賀県議会の最大会派「自民党・湖翔クラブ」は29日までに、開会中の2月定例会に提出された新年度一般会計予算案を「福祉が不十分で承認できない」として、一部修正する案を3月下旬の予算特別委員会に提出する方針を固めた。滋賀県議会で予算修正案が提出されるのは32年ぶり。委員会で可決されれば、同24日の最終本会議に提出される。
関係者によると、修正案は、県が財政構造改革プログラムで削減した乳幼児などの福祉医療費約4億円を増額し、前年度と同水準に引き上げる。その財源として、びわ湖ホール(大津市)を約半年間休館し、その間に民間会社も含めた管理者を公募して自主運営費を削減することなどを検討している、という。
今後、ほかの会派にも協力を呼びかけ、協力会派との連名で修正案を提出したい考え。同クラブの県議の1人は「知事と対決するための修正案ではない。福祉を削るような予算案は通すべきではないし、知事のマニフェスト(公約集)にもそぐわない」と話している。
県議会事務局によると、滋賀県議会に予算修正案が出されるのは1976年以来。この時は、自民党系会派が当時の武村正義知事の予算案に対し「老人医療費や遺族会援護費が不十分」などと反発し、修正案は賛成多数で可決された。
オペラ、9月に上演 びわ湖ホール新年度事業
2月29日23時39分配信 京都新聞
財団法人びわ湖ホール(大津市)は29日、2008年度の公演など事業概要を発表した。開館10周年を迎えるのに合わせて、総公演数は07年度を上回る102を催し、秋にオペラ形式の記念コンサートを上演するほか、子どもら初心者も音楽に親しめるコンサートや講座も充実。県の予算削減には基金取り崩しで補い、07年度並みの予算を確保する。
自主公演は、前年度から4件増の49件。開館10周年記念の「オペラガラ・コンサート」は9月7日に上演。複数のオペラ歌手が曲目の聴かせどころを紹介する特別企画で、同ホールの沼尻竜典芸術監督が指揮する。メーンのオペラでは、プッチーニの「トゥーランドット」や、R・シュトラウスの「サロメ」などを披露する。
新規公演として「子どものための管弦楽教室」や若手演奏家を紹介する「びわ湖からはばたく」を始め、聴き手と弾き手の育成に力を入れる。
総事業費は、07年度(15億3700万円)並みを確保。県の予算削減に伴い、指定管理料が約1割(1億1000万円)削減されるが、基金から8000万円を拠出する。
会見した沼尻芸術監督は「経費節減と新たな収入の確保に工夫し、公演の質を落とさないようにしたい。若い世代の観客と演奏者の育成も充実させたい」と話した。
今般の問題は年10億の維持費に端を発する。もう、半年休館すると全て問題解決するのか(苦笑)?民間売却、もしくは指定管理者制度で運営を民間に委託する等、稼働実績が伴わない公共ホールならまだしも、これまで多大な成果を残してきたホールにまで適用するのには理解に苦しむ。そして、指定管理者を今後別の業者にさせる事は、今までの企画の路線の大幅な転換を意味する。せっかく育てたいい人材をここで放り投げるの?そもそもこれまでの第三者での事業評価をやっていないで予算削減を言い出すこと自体が驚きだが、事業評価すれば、如何にこのホールとホールがこれまで発信した事業が有意義だったが絶対わかるはずである。その証拠に(なるかは分からないが)、この問題、びわ湖より遠く離れた東京の関係者の間でも相当話題になっていますよ。それは、文化の中心地であるはずの東京でも、(東京からすればいわば地方にある)びわ湖が今までしてきた事を評価しているからです。びわ湖ホール、ネーミングライツ導入も検討
2月23日7時50分配信 産経新聞
年間約10億円かかるびわ湖ホール(滋賀県大津市)の維持管理のために、ネーミングライツ(命名権)の売却も含めた検討に着手することを22日、嘉田由紀子知事が明らかにした。県議会での代表質問に答え、ホール自体の売却や民営化の考えはないとしながらも、財源確保の策として検討していくと述べた。
びわ湖ホールは平成10年、県が245億円を出資して開館。国内有数の4面舞台を備えた大ホールなど充実した設備は、国内外からも評価は高いという。一方で、人件費も含めた維持管理費が年間約10億円かかることから、民間委託や売却、自主事業の公演数の減少など、経費削減の必要性が叫ばれている。
嘉田知事は「びわ湖ホールは、県民にとって『誇り・宝』ともなっており、生活の中に定着しつつある」と必要性を主張。維持管理費が赤字ではないかとの質問に対しては、「公共ホールの運営は税金の投入がなくては成り立たない。文化政策のための必要投資」と理解を求め、財源確保策として助成金の獲得とともにネーミングライツの導入に触れた。
そのうえで、今年9月に迎える開館10周年を機に、びわ湖ホールに対する実践的評価を行う必要があるとの見解を示した。
できるだけ予算策定にあたって、その削減額が無くなるよう、もしくは最小限で済むように祈りたい。
これまで東京にあらゆるコンサートやオペラ等の催しが開かれ、それを地方におすそ分け…的に行われていたのに、びわ湖ホールができて以降、「びわ湖からもこういうものが発信できる」というあの勢いを我々は思い出すべきです。これからはびわ湖を初め、各地方が文化を発信していく時代です。こういう財政的に大変な時代だからこそ!我々の音楽をはじめとする文化・芸術の分野は費用対効果が一番現れにくいけれど、いいモノ(プロダクション)を作れば多くの人の心を豊かにします。それを実践してきたびわ湖ホールは全国の地方公共ホールの模範です。
と、兼ねてから全国の主だった公共音楽ホールの運営形態に興味を持つ中でびわ湖に惹かれ、声楽アンサンブル入団を狙いつつ、留学で断念したびわ湖ホールの隠れファンから、でした。
びわ湖ホールを応援する会…予算案の修正可決に反対する皆さん、署名にご協力を!
コメント、有難うございます。
確かに今般のびわ湖ホールなり、新国立劇場以下全国の公共ホール建設並びに維持はご指摘の通り採算の取れない事業である事は既にご承知の通りです。これは日本だけではなく、ヨーロッパにおいても採算が取れず、地方自治体なり、州・連邦政府等による補助無くして存続は成り立ちません。(これらのホールで展開される)オペラやバレエは人的(メンバーへ対してのギャランティ、もしくはオーケストラの招聘等)にも物的(大がかりな舞台装置・舞台美術等)にも多くの資金を必要とします。
採算が取れずともそれを続けようとするのは、Hochkultur(英語で言うハイ・カルチャー?、クラシック音楽も元々はこの中の一つ)を旧来の貴族らごく一部の人たちだけのものでは無く、大衆文化に準じ、より多くの人々の間で共有したい動きの現れの一つであると考えます。From Switzerland様がどの様な意見をお持ちかわかりませんが、本当に優れた公演はそれだけ人を感動させるものを持っていると(少なくとも自分は)信じています。
本日の産経新聞の【1都4県 週刊知事】記事中、埼玉県の上田清司知事の(5日の県議会予算特別委員会での)発言を取り上げています。
[中略]公共施設の運営として芸術性と経済性の兼ね合いを尋ねられると、「基本的に5分5分でいい。5割は事業で確保し、芸術のために5割は財政支援。今は4割が財政支援で、おまけに高い芸術性も発信している。非常にハッピーな状況です」と胸を張った。
→http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080309-00000047-san-soci
日本に話を戻しますが、バブルの時代に代表されるように、国ないし各地方自治体は競って様々なハコ(ホール)を建設しました。一部の自治体はその建物自体の稼働状況などお構いなしにその町の「シンボル」的な存在である事だけに満足しました。しかし、それと相対する自治体はハコをきちんと魂の入ったものにしようと、学芸員等の専門職を採用し、貸館事業だけでは無く会館として(市民にとって)有意義な企画を立てて、どう市民に紹介できるか等に腐心しました。
勿論、びわ湖ホール設立以前から後者の様な動きは始まっていましたが、びわ湖ホールもこの道を選択しました。
「需要」の参考になるかはわかりませんが、財団法人びわ湖ホール(滋賀県芸術劇場びわ湖ホールの指定管理者)のデータによると、
■自主事業
□ホール単独主催・他ホールや劇場との共催による催し物への入場者数(単位:人)
平成16年度 47,833
平成17年度 46,847
平成18年度 47,012
□大ホール(座席数1,848*)で行われた催し物を例にとると、
平成16年度 13,892 (12公演)
平成17年度 10,176 (9公演)
平成18年度 47,012 (10公演)
■貸館事業
平成16年度 220件 133,214
平成17年度 216件 139,229
平成18年度 219件 119,394
[注]
●以上の資料の出典は財団法人びわ湖ホール平成16年〜18年「財団情報」による。
*オーケストラを伴う公演時にはそのうち50-80席(?)をオーケストラピットとして使用する為、その場合の実際の座席数は1770前後になると思われる。
ホールの稼働状況も去る事ながら、(一部本記事と記載がダブりますが)ホール付属の声楽アンサンブルが、ホール内での公演出演に留まらず、県下の各学校や県内外の各団体の要請に基づいて巡演し、普段聞く機会の少ない生の演奏を提供しています。本記事に書いた通り、時期的なタイミングが合わずなる事はできませんでしたが、自分が声楽アンサンブルのメンバーになる事を一時でも考えたのは、この様な意義のある活動に自分も参加し、一人でも多くの聴く人に喜んで貰えたら…と考えての事でした。今般のびわ湖の記事を書いたのも、ハードだけで満足せず、その地道な企画と活動(他のホールの様に近隣のホールでやる演目、興行主が送ってきたパンフを見て「あっ、うちも」と興行主から買って終わってしまうよくあるパターンで無く)を純粋にすごいな、と思っての事でした。
ただ、ここまで書いては見ましたが、確かにFrom Switzerland様の仰る様に、ジャニーズやオレンジ・レンジ他のポップス音楽等のアミューズメントと比べると我々の仕事や、びわ湖ホールで催されるクラシック音楽やバレエの公演は確かに需要が少ないのかもしれません。補助無しに儲かりませんし、自己満足かもしれません。
私はびわ湖ホールのこれまでの成果を意義のあるモノとしてお伝えしたかったのですが、私の学の無さゆえ、これ以上の返答は難しいです。大変申し訳ございませんが、この辺で勘弁して下さい。
長文、失礼致しました。
報じられている「期限」が刻々と迫っていますが、悲しいことにならないよう、思いが伝わるように・・と願っています。
こちらからもTBさせていただきます。
初めまして&ようこそ、私のBlogにお越し下さいました。
在京の音楽業界関係者でもこのびわ湖の件はショッキングな出来事でした。
解せないのが、昨日の県議会予算特別委員会についてBlog内に書かれた或る自民党の県議は、今般の京都新聞に端を発する報道を「根も葉もない事」と言った事です。
また、もろもろの動きを見ると、今回の件は「こういう事を言ったらどう世間は反応するか?」という様子見?ただ、様子見にしても、昨日ホールの件で質問に立った別の自民党県議の動きも気になります。ただの意趣返しにしては疑問の部分も多い。もう少し我々は今般の状況を見続ける必要があるように思います。
今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
さて、入場者人数だけみると少ないですね。さすがに年10億円の維持費は難しいですね。貸館事業でなんとか再生できるといったものでしょうか。常識的な見解からすると、売却や民営化は英断といった所でしょうか。
私は客の立場なので技術的なことはわかりませんが、ドイツの小さな教会での(学生でなく)プロあるいはセミプロがやっているクラシックのコンサートが一番好きでしたね。一流のオペラを見たことがないだけかも知れませんが、私のような素人から見ればはっきりいって、ホールの設備が整っている、演奏者が完璧に弾ける、歌手が完璧に歌うなどはそれほど感動を受けません。そんなものは家でDVDと質の良い音響装置でほぼ同じ臨場感で聞くことができます。貴君に呼んでもらった学生のオペラコンサートのように、素人の私が見てもぎこちなく客を全く意識していない発表会的なものは別ですが、ある一定のレベルを超えていると技術と違った別のものに感動しますね。その人の個性から湧き出る独特のものでしょうか。これが素人の私の見解です。
したがって、貴君と同じような考え方の東京の関係者が”文化の中心地から離れた所で一生懸命やっている”的なスタンスでやったような催し物に人々が感動を受けるとは想像しがたいですね。
後、ポップス音楽等のアミューズメントをしている人たちが全く練習をしていないとも思えませんけど。
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