2007'03.18 (Sun) 00:39
「カールスルーエ音楽大学は●●カ国の国々から生徒が来て音楽の勉強しています」
と言う、学生オーケストラの写真と共に、その国の一覧が書いてあったポスターが学校に掲示されてあったのはもう何年前だろう?
あのポスターを見てまずはじめに感じたのは、「うぁ、この学校はドイツ国民の税金で建てられている大学なのに、こんな《留学生歓迎》的なポスター作って大丈夫なのか?」という事。あの当時はまだ冗談ぽく言っていて、どこか余裕があった。
昨年の夏ゼメスターから大学内の動きは急になった。
"Ba-Ma Sitzung"という文字を研修所や僕の教授がメールで送ってくる時間割の中に多く見られるようになった。"Ba"はBachelor(学部)、"Ma"はMaster(修士)…従来のディプロム・アウフバウ課程から、学部・修士課程制度への移行である。
今までドイツの音楽大学の制度を説明する時、制度が独特で「学部相当」・「修士相当」としか説明できなかった(ちなみによくプロフィールで「ドイツの音楽大学大学院修了」と書かれている方がいらっしゃるが、それは殆どの場合、厳密に言うと違う)。一般的には以下の通り。
ディプロム課程
…日本他の大学における学部相当。約5年〜6年(10〜12ゼメスター*)。
↓
ツーザッツ(アウフバウ1)課程
…大学院に相当。約2年(4ゼメスター)。
↓
ソリスト(アウフバウ2)課程
…州立演奏家資格(Konzertexamen)を取得する為の課程。約2年(4ゼメスター)。
この課程を修了すると原則的**に音楽大学にいる事は出来ない。
※参考…ドイツ大学留学の手引き(独立行政法人 日本学生支援機構)
で、昨年10月から順次移行する新課程は以下の通り。
学部課程
約4年(8ゼメスター)
↓
修士課程
約2年(4ゼメスター)
↓
ソリスト課程
…州立演奏家資格(Konzertexamen)を取得する為の課程。約2年(4ゼメスター)。
ソリスト課程以外はいわゆる諸外国の大学制度と同じ様な形になる訳です。この課程移行の背景は、ドイツがEUに加盟して、ボロニア宣言に基づいて大学の諸制度も諸外国にあわせて行こうとしている表れなんだそうです。この制度の導入は他のドイツ内の州立音楽大学にも広がりを見せています。
ちなみに私は旧課程に於けるディプロム課程修了生。新課程における修士課程には進学できますが、残念ながら旧課程で多く時間をとって勉強していると見做され、新修士課程では1年しか在籍できません。この一年で様々な授業、20枚以上のドイツ語論文も1回のリサイタルもこなさなければなりません。実技よりも他の教科や論文作業のほうに必死、って事は容易に想像できます。正直、新課程での一年在籍者は期間内に修了できず時間切れ中退の可能性は多分にあります。(だから、仮に修了できずとも、皆さん、笑って許して下さい、お願いしますm(__)m)
では、この課程移行がどうして日本人学生らにとって不利なのか?
従来、日本の4年制音大を卒業してすぐの学生が留学した場合、卒業した大学の履修済証明書に基づき、ディプロム課程の途中(だいたい5,6ゼメスター以上)にEinstufung(編入認定)されます***。以降、入試を受ければアウフバウ課程等に進級し4,5年は大学に在籍する事ができました。大学によっては入試時にゲーテ・インスティトゥートのZD(Zertifikat Deutsch)資格者・若しくはGrundstufe(基礎課程)修了程度の語学能力で入学していた日本人学生はザラでした。ハイ、かく言う不肖・初鹿野もその一人です。
それに対して、新課程下では、日本の4年制音大を卒業してすぐの学生が例外無く修士課程以上の入学試験しか受験を許可されません。また、本学の様に、その試験内容が今後難しくなるとなっては余計来にくくなるでしょう。更に修士課程の授業に「アナリーゼ」を設けている大学もあるようですが、そもそも日本の音楽大学では指揮や音楽学、作曲等の学科にしかこの科目は無く、演奏系の学科学生への履修設定が急務とされるもの。しかもドイツの音大でディプロム課程の編入者はこの授業はカットされるのに、新修士課程では「在学時にやったものと見做す」として、更に難しい現代音楽のアナリーゼをやらせる。これはちょっと酷い。今まで以上に「入学試験時」に相当のドイツ語能力と、アナリーゼの能力がないと大変だという事が言えるでしょう。
以上はディプロム・学部・修士課程の話ですが、ソリスト課程についても話はなかなか一筋縄ではいきません。もともと日本の音大の大学院を修了し、きちんとした技術を持った学生がミュンヘン・ベルリンの様な大きい音楽大学のソリスト課程に入るのと、本学の様な(どちらかというと)田舎の音大のソリスト課程に入るのは月とすっぽん、天と地ほどの差があります。本学や同規模の大学において、とにかくソリスト課程の試験が厳しく、それ相応の実力があっても入る事ができなかった、という話は山ほどある一方、或る大学ではディプロム課程にいた生徒で上級課程に進学を希望する学生は殆どソリスト課程に進学している、という話を先日別の同僚から聞きました。ドイツの大学は大学によって、州によってまちまちなんだなぁ、と考えさせられる一例ではあります。
とにもかくにも、本当にこんな落ちこぼれを入学許可してくれた声楽科の先生方、有難うございました。
あと一年、修了できるかは分からないけど、頑張って勉強しますm(__)m
* das Semester。ラテン語で「六ヶ月毎の」という意。日本では前期・後期。
** 室内楽や歌曲科、オペラ科等の"Ergaenzungstudium"と呼ばれる科・研修所や一部の大学においてはこの限りではない。
*** この例は日本の大学と進学したいドイツの音大での専攻が同じ場合。また、本学においてですが、今までのディプロム課程への入学は24,25歳位が一つの目処です。
ご指摘の件、ドイツ語から日本語にする時に、適切な訳語が無いのが原因だと思うのです。
Aufbaustudiumのder Aufbauは、建設・再建・設立・構成・増築・車体のボディ…をいをい。
Zusatzstudiumのder Zusatzに至っては追加・添加・追記・補足…
●●音楽大学追加課程修了…って書くぐらいなら大学院修了って書いちゃえ、って人の気持ちもわからなくは無いです、はい。
その課程や学位名もそうだけど、最近流行のディプロム工場における学位(特に博士号)の方も問題かと。
試しに今度、サイバー大学(文科省一応認可)に倣って、はつかの大学、やりましょう。副学長やりません?
副学長という職位に見合うように今度「工博」の学位、出しますから…(そんなお気軽に出せるかぁ!!)
逆に日本のほうが(手順だけ見れば)厳格なのかもしれないですね。ちゃんと委員会作って、主査・副査をたてて…ってね。そうか、Dr. VaterやDr.Mutterとの人間関係…日本並みにお中元・お歳暮他は欠かせない、ドイツにもそんな日が来るのでしょうか?
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